吃音の進展段階・図説

都築澄夫先生の著書より

「吃音は進んでいく」内容を変えずに引用と加筆。

 いろいろな統計から、吃音は人口の約5%くらいの人に発症するといわれている。これは国・人種・文化に関係なく、ほぼ同じ割合で見られ、目安として約半分は思春期前に自然治癒するとされています。

 「自然治癒」は、幼児期や学童期に周囲の大人により吃音が治りやすい環境が整えられ、およそ半分は何もせず、もしくは環境を整えれば思春期までに自然に治っていくということです。

 環境の改善によって治らなかった吃音は、よくなったり悪くなったりをくり返し、しだいに進んでいきます。そのように進展した吃音をもつ成人が、人口の約1%を占めるといわれます。

 吃音の進み方を図のように第1~4層に分けると1~4の数字が大きくなるほど、吃音の状態が進むことを意味します。第1層は音の「くり返し」「引き伸ばし」が現れ、難発は現れません。

 第1層・第2層では症状の「波」があり、おおむね月単位で出たり出ないときがあるが、治ったわけではなく吃音の特徴なのです。第1層では「波」は半々ですが、第2層では吃音が出る方が長くなり「時に消える」という状態になり難発が現れ、ともなって随伴症状も出てきます。その違いは第1層では吃音があると自分では気づかないまま吃っていて、第2層ではいま、自分は吃っていると気がつくようになるということです。第2層のうちはそれにより少々吃っても、つっかえようが難発症状も強くないので苦労しないで話すことが多いのです

 第3層になると「苦悩」、我慢できないくらい「つらい、いやだ、はずかしい、苦しい」という状態になります。そして難発に対処するため話すテクニックを意識的に始めます。難発の状態から脱出するためにあのー、えーとなどの語句をはさむ助走や、言えると思うまで待つ延期があります。何か言おうとするとき言いにくい言葉をさけ、おなじ意味の違う言葉、語の置き換えも行うようになります。例えば「持って行く」を「持参する」などです。

 第4層になるとそのテクニックを頻繁に周到に使うようになり、第3層にない特徴として回避が加わります。「話すテクニック」では対応できないと予期しとうとう話すことを避け始めたり発言を人にたむ発話回避。聞こえない振りをして返事や会話を避け、さらにはその場所に行くことを避けるようになる場面回避となる

 以上のように吃音は進み、治療の時期としては第2層くらいまでで様子をみてる間に1~2年の時間が経過します。この時期に症状に対して親御さんが否定的な反応人為的な話し方を教えたりはしてはいけません。

 この時期に周囲や他の子供たちからのいじめ・からかい・無理解な先生などによっては良い方向には向かないでしょう。第3層になっても自然治癒の可能性はあるが確率は非常に低い。

 第4層では成人に近づきます。治すためといっても言語聴覚士でも専門部門が必要となりますが、現実的に吃音者が居住する地域で求める専門家に出会うことが出来るでしょうか?